第2回 - ARDBEG - アードベグとチョコレート

シングルモルト倶楽部メンバーレポート

穏やかな陽射しのなかに、かすかに春の匂いのする、よく晴れた土曜日の午後。
シングルモルト倶楽部鹿児島、第2回テイスティング会が開催された。
場所は前回と同じく騎射場のBar BILBAO。
今回のテーマは『アードベッグとチョコレートの出会い』。
バレンタインデーのちょうど一週間後でもあり、チョコレート好きには嬉しいテーマだ。

アードベッグは言わずと知れた‘最もスモーキーな’アイラモルトである。
強烈なピート香、ヨウド臭をもつアードベッグ。
現在でこそシングルモルト通(とくにアイラ好みの方々)からの熱烈な支持を受けているが、過去には幾度もの操業停止の不遇時代があった。
近年、前回のテイスティング会の主役であったグレンモーレンジ社の買収により息を吹き返したアードベッグ。その個性的な匂いや味に加え、ルイヴィトン・モエ・ヘネシーの卓越したセンスにより、すっかり垢抜けたクールなボトルデザインとなりモルトファンを惹きつけてやまない。
ウイスキーも人間と同様、中身と外見が共に魅力的である場合、他を超越した‘高嶺の花’となるようだ。

第2回テイスティング アードベッグラインナップ
第2回テイスティング チョコレート
第2回テイスティング 割り水ディーサイド
第2回テイスティング アードベッグ資料

今回のテイスティングボトルは新生アードベッグの史跡をたどった‘アードベッグ10年への道’シリーズ。

そして、‘世界中どこにいても午後8時には8PPMのブラスダを飲みましょう’のキャッチコピーがキュートなアードベッグの食前酒。

市場からすっかり姿を消したベリーヤング(2009年3月、アイラ島のアードベッグ蒸留所にも皆無であった。商品としてはもちろん、試飲コーナーにもなかった。ちなみに発売後即完売した驚きの100PPM、スーパーノヴァは2杯も飲むことを許された。)もラインナップされ、まさに‘高嶺の花’を味わう至福の時となった。

第1回テイスティング会でアロマやフレーバーを表す時に何か表現の見本のようなものが欲しいという声が多数あり、今回はテイスティングノートに加え、ノージングサークルというシートが新たに配布された。
これはアロマやフレーバーを以下の8つに区分し例を示したもので、土屋氏の “モルトウィスキー大全” を参考にしたらしい。

その独特な例の挙げ方がおもしろく、興味深い図であった。

第2回アードベッグテイスティング 風景[1]
第2回アードベッグテイスティング 風景[2]
第2回アードベッグテイスティング 風景[3]
第2回アードベッグテイスティング 風景[4]

ベリーヤングから順にテイスティングが始まった。
「おいしい」「若々しいパンチがある」「アードベッグらしいスモーキーさ」「薬くささがいい」と全員絶賛のベリーヤングに比べ、オールモーストゼアは「個性が薄れる」とやや不評であった。ルネッサンスはバランスが良く納得の仕上がりだ。
最後のテイスティングとなったブラスダは「これはこれで爽やか」だが「飲む順序を間違えた」との声が多かった。
そう、アードベッグの食前酒-ブラスダ-、真っ先に飲むのが正しかったかもしれない…。

第2回アードベッグテイスティング 風景[5]
第2回アードベッグテイスティング 風景[6]

スモーキーなアードベッグ。
燻製や焼き鳥には絶妙にマッチングするが今回はチョコレートとのコラボレーションである。
スコットランドはアイラ島の個性派モルト、アードベッグとジョイントしたのは、アジアの南国鹿児島のヤナギムラ&ミルフィユのチョコレートであった。
5種のチョコレートが用意されたが、アードベッグとの相性が特に良かったのはヤナギムラのアイリッシュウイスキー(ジェムソン)入りの一粒。
ミルフィユの無花果を練りこんだ一粒も好評であった。
しかし、参加者の一人が持参したフランスのショコラティエによる繊細な一粒のチョコレートの登場により、南国鹿児島のチョコレートは‘アードベッグの花嫁’の座を奪われた。
ヨーロッパの洗練されたチョコレートとは比較にならない個性を、今後の鹿児島チョコレートに期待するところであった。
チョコレートも人間と同様、どんなに洗練された美しさも、きらきらと輝く個性の前にはかすんでしまうものである。きっと。

アードベッグのピート香とチョコレートの甘い香りにつつまれて、シングルモルト倶楽部鹿児島第2回テイスティング会は終了した。
Bar BILBAOを出ると辺りは蒼い夕闇に包まれていた。
ほんのりほろ酔いの土曜日の夜のはじまり。
身体中を駆け巡るアードベッグの効用か、何か楽しいことがおこりそうな、そんな気分の夜であった。

シングルモルト倶楽部メンバー オリーブ

Written by オリーブ